真夏、東京の片隅。食品の配達で生計を立てる夏希と借金の取り立てを生業とする夏生。ふたりの胸の内に捨てたはずの父と妹の面影が不意によみがえる。長らく離別していた家族を訪ねたふたりは、十数年来の「家族」をやり直そうとする。父娘、兄妹、それぞれの距離は次第に縮まりつつあったが…。この映画では、誰かと共に生きようとする人間の動態を、美しい自然の情景と音、そして静かに流れるラフマニノフの旋律が包み込み、一種の「予感」が演出されている。小さいかもしれないが、ひとつの生命が別の生命と確かに触れ合い、そして巡っていく、その愛の小さな足跡がここにはある。中村映里子、光石研、池松壮亮の大胆かつ繊細な演技合戦も見どころ。